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エタノール沈殿

親水性高分子であるDNAやRNAを、エタノール中で不溶化/沈殿させることで、DNAやRNAを精製すること。エタ沈(えたちん)。

原理

DNAやRNAといった核酸は、非常に多くのリン酸ジエステルのアニオンをもつ高分子である。このような親水性の高い分子は、エタノールのような有機溶媒に対する溶解性が低く、不溶化する。一般に、扱うDNAやRNAは少量なので、遠心分離機で沈殿を集める。

目的

  • DNAを乾燥させて保存したい。
  • 過剰な塩を取り除きたい。
  • フェノクロ精製後のDNAを回収したい。

方法

tube

  1. 溶液量の1/10の3M AcONaを添加する。
  2. 共沈剤を添加する場合はここで添加する。
  3. 冷えた100%エタノールを溶液量の2倍程度加え、混合。
  4. フリーザーなどで冷やし、沈殿が生成するのを待つ。
    (20分程度。共沈剤使用時は待たなくてよい。)
  5. 遠心機で沈殿を集める。(4℃, 15000rpm, 10 - 15 min)
  6. 上澄みをピペットで除くか、デカンテーション。
  7. 冷えた70%エタノールを加え、混合。
  8. 再度遠心。(5 - 10 min)
  9. 遠心エバポレーターで乾燥させた後、TEなどに溶解。

ヒント

沈殿はDNAのNa塩

核酸は、リン酸の対イオンとしてNa+とイオン結合したナトリウム塩として沈殿させるために0.3M NaOAcを加える。(加えすぎると、エタノールaq.を加えたときにDNA塩でなく、別のNa塩が析出してしまうので注意。)

沈殿ができないときは

核酸の量が非常に少ない場合は、沈殿がなかなかできない。濃度が低いために溶けてしまったり、凝集に時間がかかるため。 その場合は、遠心前に多糖を添加(20mg/mLのグリコーゲン溶液1μL)して共沈させることもできる。あらかじめ調製された各ベンダーの共沈剤を使っても良い。

また、極性の低いイソプロパノールを等量用いて沈殿させることもできる。イソプロパノールはエタノールほど揮発しないので、最後に70%エタノールでエタ沈してイソプロパノールを除く必要がある。イソプロパノールで沈殿させたDNAは透明に近いので、沈殿がはっきりと見えない場合がある。

どうしても沈殿ができない場合は、DNA溶液をブタノール濃縮してからエタ沈すると沈殿させることができるかも知れない。

(参考:各ベンダーの共沈剤)

完全に乾燥するかどうか

遠心エバポレーターで完全に乾燥すると、再度溶解する場合に時間がかかる。次の反応や操作によっては、風乾で良い場合もあるので、実験計画にあわせて対応する。再度溶解するときに、まちがってもソニケーターを使わないように:!:

廃液

エタノールやイソプロパノールなどは「有機溶媒」なので、これらの廃液は実験室で決められた方法で廃棄する。

問題

  • Na+を供給するために、なぜNaClではなくNaOAcを使うのでしょう?
  • 減圧乾燥でなく、遠心しながら減圧乾燥するのはなぜでしょう?
  • 「溶媒和」とは?

溶液

70%エタノール

NaOAcなど、過剰な塩を洗浄(リンス)できる。

沈殿として得られるもの上清に溶けて取り除けるもの
核酸DNA, RNAdNTP, NTP
-バッファー中の塩
溶媒-有機溶媒
(フェノールやクロロホルム)

100%エタノール

沈殿として得られるもの上清に溶けて取り除けるもの
核酸DNA, RNA
dNTP, NTP(高濃度)
-
バッファー中の塩(高濃度)-
溶媒-有機溶媒
(フェノールやクロロホルム)

リンク

書籍