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生化学実験でよく使われる緩衝液

酸や塩基を加えてもpHの変化が小さく、一定のpHに保たれる水溶液を緩衝液(バッファー)と呼び、pHの変化が抑えられることを緩衝作用と呼ぶ。もっとも緩衝作用が強いのは、溶質のpKa付近(pKa ± 1)である。

Goodの緩衝液

flask_large Goodらによる対イオンバッファー1)は生化学実験に適している。
種々のpH範囲に適したバッファーをまとめて Good's buffer (Goodのバッファー)と呼ぶこともある。

Good'sバッファーには生化学実験に適した以下のような特徴がある。

  • 生理的なpKa値(6.0 - 9.0)をほぼカバーしている。
  • pKa値が温度や濃度に依存しない。
  • 化学的に安定で、生化学的な反応に干渉しない。
  • 細胞の培養に使用でき、細胞膜を透過しない。
  • 分光学的な測定が可能。
名前pKa
(4℃)
pKa
(20℃)
pKa
(25℃)
pKa
(37℃)
特徴
MES6.336.156.105.97グルコース存在下でのオートクレーブ不可
ADA6.806.626.566.43金属イオンのキレート能あり。
PIPES6.946.806.766.66Lowryのタンパク質定量法に干渉する。
MOPS7.417.207.146.98多くの実験に使用できる。
HEPES7.777.557.487.3非常に多くの実験に使用できる。温度依存性も非常に小さい。Lowry法に干渉する。
CHES9.739.559.509.36塩基性バッファー(pH 8.6 - 10.0)。260-280 nmにわずかに吸収がある。

リン酸バッファー

クロマト、保存、洗浄などに広く使われるバッファー。

→ 種々のpHのリン酸バッファー調製方法は、リン酸バッファーflaskページ

その他のバッファー

名前pKa
(4℃)
pKa
(20℃)
pKa
(25℃)
pKa
(37℃)
特徴
Tricine8.498.158.057.79多くの場合、Trisで代用できる。電気泳動などで用いられる。金属イオンのキレート能あり。
Tris8.758.308.087.82Tris-HClバッファーは、幅広く使える安価なバッファー。短波長での吸収が小さいため、分光学的な測定にも適している。ただし、温度依存性が高い。さらに、1級アミンがあるため、Biuret法やLowry法、タンパク質の固定化反応などには使用できない。
Gly-Gly8.858.408.267.92Tris同様、温度依存性が高い。

滴定曲線

Trisの滴定曲線(縦軸:pH, 横軸:酸に対するTrisの当量)をプロットすると、pK付近でTris濃度の影響を受けにくいことがわかる。

#gnuplot code
set xrange [0:1]
set xlabel "molecular ratio of Tris to acid"
set yrange [0:14]
set ylabel "pH" 
set size 0.41
pK_Tris = 8.08
set label "pK = 8.08 (298K)" at 0.05,9
Tris(x) = pK_Tris+log(x/(1-x))
plot Tris(x),pK_Tris

リンク

References

  • Good NEet al.Biochemistry5p467-77(1966 Feb)
  • Good, N.E. & Izawana, S.: Methods Enzymol., Part B
    Vol. 24, p. 53 ff. (Pietro, ed.) (1972) Academic Press, New York
  • R.J. Beyon & J.S. Easterby: Buffer solutions The Basics,
    (C. Howe, ed.) 1 st ed. (1996) IRL Press, Oxford
1)
Hydrogen ion buffers for biological research.
Good NE, Winget GD, Winter W, Connolly TN, Izawa S, Singh RM
Biochemistry5p467-77(1966 Feb)